今回も治療院とは何も関係ない話ですが、治療室に展示中の熱帯魚の維持管理に連なる話です。
グッピーは親子のわずか一代で形質が大きく変わってしまう魚であるため、次の世代につなげるための親世代の選別が非常に重要になります。
まだ合計7世代しか累代(世代を重ねること)していない初心者の私ですら、この親選別の重要性は理解できました。
ところが実際、どのように選別していったらいいかというマニュアルのようなものは中々見つけられませんでした。もしかしたら、ブリーダーや愛好家たちの秘中の秘なのかもしれません。
そこで、1年8か月、2系統を飼育した記録と私なりの考察をYOUTUBEにて公開し続けていました。
結論から先に述べさせていただくと当チャンネルで飼育している「エンドラーズイエロータイガーグッピー」は判明している部品が次のようになります。
①下地のベースカラーは灰色に赤い差しの入る地味グッピー色
②テクスチャーカラーに黄色の色彩
③エメラルドグリーンの構造色(光の反射によって出る輝きの色)
④上半身の背中側にプラチナと呼ばれる構造色とそれに伴う暗色のテクスチャー
⑤一番上のレイヤーにスネークスキン
⑥尾びれは決まっていない
こうなります。次の写真のグッピーが代表例となります。
以下の写真は当院のエンドラーズイエロータイガーグッピーPとF1です。この形の維持を目的とします。
遺伝的な要素として次を解析済みです。
①常染色体で対立しているノーマル(記号AA)とゴールデン(記号bbブロンドのb)
ノーマルの地味グッピー色が顕性(優性)であり不顕性(劣性)であるゴールデンは不顕性遺伝子が二つそろわなければ現れません。
②おそらく常染色体に乗っている黄色の体色。
ゴールデンとの区別ですがゴールデンの場合は不顕性であるb遺伝子を両親からそれぞれ二つもらえた場合にのみ出現し、生まれた時から全身が黄色となります。
それに対し、こちらの黄色は大体生後60日目くらいから出現するノーマルの上に乗ってくる少しくすんだ黄色です。
このことからグッピーの体色にはベースカラーとテクスチャーカラーが存在するのであろうと考えています。
次は性染色体に伴性(必ずその遺伝子に伴う)に遺伝してくる形質です。
③Y(オス)染色体に伴性している構造色としてのエメラルドグリーン
こちらはイエロータイガーのメスとオールドファッションのオスを掛け合わせ
得られた子供にプラチナとエメラルドグリーンが消えたことで確認できました。
上の写真のようにのぺっとした黄色地にスネークスキンが乗っている個体が多く生まれました。
④Y染色体に伴性している構造色としてのプラチナ
これも上記の写真の個体群にプラチナが発現していないので、少なくとも構造色プラチナもY染色由来であると結論しました。
⑤X(メス)染色体に伴性しているスネークスキン(サンプルペア1、サンプルペア2)
こちらはイエロータイガーのオスとオールドファッションのメスを掛け合わせ得られた個体にプラチナとグリーンの構造色が出現しスネークスキンが消失したことから、当院のエンドラーズイエロータイガーグッピーのスネークスキンはメス由来であると結論しました。
サンプルペア1↑の個体群はプラチナとグリーンが出現しノーマルカラーにオールドファッションの単眼模様が出現しています。サンプルペア2↑の個体群はプラチナが強く出現し黄色のテクスチャーと黒いテクスチャーが出るもコブラ模様は見られません。ここからは余談ですが、メス側がスネークスキンを持っているという説の補強になるので乗せておきます。
偶発的に出現したダブルソード♂の子孫を維持しようとエンドラーズイエロータイガーのメスと掛け合わせた結果。
F1でスネークスキンを半分だけ持ったダブルソードのなりそこないと、ややダブルソードになっている個体が出現しました。ベースカラーはやはりノーマルです。また黄色のテクスチャーはオスもメスも持っていることが一枚目の写真から想像できます。
これを選別累代した結果、F4世代で完全にスネークスキンが消失し、ダブルソードの固定化に成功しています。徹底的にテクスチャーを抜いていった結果、スネークスキンどころかプラチナもエメラルドグリーンもすべて消えベースカラーのみのグッピーとなりました。
以上の実験の結果当院のエンドラーズイエロータイガーグッピーを維持するには少なくとも
プラチナとエメラルドグリーンの構造色をもった♂
スネークスキンを持ったXレースメスまたはスネークスキンを内包したメスが必要となると予測できます。